秋のさんぽ

一気に冬の手前のようなお天気ですね。
先週はお休みを頂き2週間ぶりの営業でしたが、
昨日・今日は、お店の中が長袖2枚でも肌寒く感じられました。
でも、空気が澄んでいくようで、この季節はとても好きです。



先日、根津美術館の展覧会「春日の風景」を観てきました。
http://www.nezu-muse.or.jp/jp/exhibition/index.html


根津美術館ファンの方は多くおられると思いますが、私もその一人です。
とても久しぶりの訪問で、古きよきものに心洗われるようでした。


今回の企画展では奈良の春日社信仰を示す「宮曼荼羅」というものを初めて観ました。
神様の世界を表した絵といったところでしょうか。
けれど仏教の曼荼羅と異なるのは、
現実の春日社の自然の風景の中に空想の神の世界が描き込まれていることで、
自然の中に神を見出していた日本人らしいものです。


神々のすむ神聖な土地として春日の地に思いを馳せて信仰していたのだろうと、
当時の人々の精神世界が目に浮かぶようでした。
その土地の様子を簡単に知ることのできない時代だからこそ成り立っていた、
大きな物語を感じました。


さらにその後武士の時代になると、
春日社信仰が仏教信仰と混ざりあい民衆に広まっていく過程で、
曼荼羅の絵の中に「鹿さん」が登場するようになったのも、とても興味深いものでした。
奈良の山に鹿がすんでいて、神様が鹿にのってきたというストーリーが生まれたのでしょう。
けれどそれ以外の部分で、鹿の性質の何かが日本人の心に作用するものがある気がします。
それで、鹿さんが神様の物語を語り伝える重要な要素として選ばれていることと、
現代においても「地デジカ」やらCMの「かくかく しかじか」やら、
何かとキャッチーなアイテムとして使われやすいことはどこかでつながっていて、
偶然ではないように思うのでした。


常設展スペースも企画展スペースより人が少なく静かな上、
いつもいいものがさりげなくあり愛すべき空間です。
今回は心を射抜かれるような定慶の仏像が圧倒的な存在感でした。


できればお店の近くに根津美術館があって、
お客さんのおいででない時間にちょいちょいのぞきに行けたら、などと願わないわけではありませんが。
ちょっと特別な場所にしておきたいので、時々しか行けない今の方がきっと幸せだと思います。