「ロングライフデザイン」

一月程前になりますが、「ロングライフデザイン」について考える勉強会に参加してきました。


ナガオカケンメイさんが代表を務めるD&DEPARTMENT主催の会で、60 visionという活動の一環で開催されました。デザイナーでもあるナガオカさんと家具メーカー担当者がパネラーとなり、話を聞いたり質問をしたり、生活者(ナガオカさんの言い方をお借りしています)の視点と物作りの視点が交われるような、とても興味深い場でした。
参加した生活者の中に「いいデザインとは?」について考えている方が多かった事も、一生活者として励みに、器屋としてもいい刺激になりました。



この会を機に改めて考えたことは、今の生産と消費サイクルの早さ。もう言い尽くされていますが、日本がこれ程までに豊かになったのはこの30〜40年。立ち止まる事なくただ明るい方を目指して、大量生産、大量消費を促してきた結果です。
私はよく、両親から子供の頃がいかに貧しかったかについて、話を聞かされていました。そこには、貧しさゆえの豊かさ、のようなきれい事は感じられませんでした。
話だけを聞いていると、目に見える豊かさ・明るさを目指して、大きなビジョンもないままに経済成長してきた日本のあり方に、仕方なく思うところもあります。けれど行き過ぎた今となっては、生産・消費のスピードには暮らすリズムとの違和感、長く使えないものが多すぎる事への空虚さがどうしてもつきまとい、このスピードはどうにかするべき時期に来ているのは確かでしょう。
さらにこの問題の根本は、単に物質的な面ではなく精神的な価値観の面にあるはずです。だからエコという流行では何も解決されないような気がします。


この生産と消費の関係を少しでもよくする第一歩が、私たち生活者がものの選び方を変えることかもしれません。ものを買ったら、共感できる企業への清き1票、と考えたら、政治における選挙みたいなものです。でも、投票よりずっと直接的な影響力があるように思います。
ものを作る企業の多くは、継続的にもうけを得られるスパンで、ある程度の消耗品を作っていいます。旧型がどんなにいいものであっても、流行にあわせて新型を次から次へと作る。壊れたら買い替える事を前提に、修理してもらえなかったり古い部品を取り寄せ出来なかったりするものが増えています。
必要以上に利益を追い求めず、流行を追わずに長く使えるいいものを目指す企業は、やはり共感できます。消費欲を変に刺激しないロングライフなデザイン=いいものという観点でものを選ぶことで、陰ながら頑張っている企業を応援することにつながります。ある程度大量消費し無駄をしながら歳を重ねてきた今だからこそ、これからはできるだけふさわしいお金の使い方ができたらいいなと思うのです。
そして、長く使えるいいものとの出会いは、暮らしの中で潤いになり、生活者として生きやすくしてくれる側面もあると感じます。もちろんそのためには、自分の目と心で情報を判断しものを見る力が必要ですし、実際にお金を払って使ってみてわかる事が多いのでそう簡単ではありませんが、自分自身のために追求してみるだけの価値はあると感じます。


器の消費や古いものの選び方についても思うところがあります。それについてはまたいつか。



今日の締めは、益子の陶器市。先日、みどりの日に出かけてきました。今回、買い付けの品はありません、ごめんなさい。
古いものを扱うお店に寄ったら、古いガラスの模様が、陽の光に当たってくっきり影を作っていました。
夏の縁側を思い起こさます。


それではみなさま、楽しいGWをお過ごしください。
そしてお時間ありましたら、弊店へものんびり遊びにいらしてくださいね。