今野安健 展

あっという間に、今野安健展の前半3日間が終わりました。
前半へおいでくださった皆さま、ありがとうございました。


土曜日12/4は初の試みであるスライドショーも無事終えることができました。
慣れないことも多くありましたが、
予想以上にご参加いただいた皆さまから「お話を聞けてよかった」と反響が大きく、
今後の一つの指針も頂きました。
作家の思いなど使う人には関係ないでしょう、と今野さん自身語られることはあります。
(そうした押し付けがましくない点も彼の器のよさだと思います。)
それでもこの機会が何かにつながればと、
隠す事も茶化す事も飾り立てることもなく、誠実にお話してくれ、
初の試みは今野さんだからこそできたのだと感じています。


とてもいいお話が聞けたのに、ドタバタでビデオを撮り忘れてしまいました。
参加できなかった皆さまともyou tubeで共有できるとよかったのですが、
これはまた次の機会の課題とさせて頂きます。



スライドを見ながら、器作りの手順から作り手としての姿勢まで、丁寧にお話してくれる今野さん


このお話会でもご紹介がありましたが、
今野さんから聞き出したお話の中で、とくに印象的に残っていることがあります。
それは器を作ることについて、
「器は抽象画のようなもので、自分はキャンバスを用意して、炎が絵を描いてくれる」
と語られていたことです。
例えば、今日の空がきれいだな、とか、今日の月はきれいだな、といった自然の美しさは、
人がコントロールできるものではないし、二度と再現されないその時だけのものです。
(そして、それを見る人はそれぞれの思いでその景色を見る、
 ということも含まれると私は捉えました。)
そういう自然の美しさを薪窯で表現していきたいとお話をされていました。


というと、薪窯は窯の中に器を並べ、薪をくべ、ただ炎にまかせて焼くだけの適当なものだ、
とイメージされるかもしれませんが、実際には全く違います。
今野さんは中川自然坊氏の元での修業時代だけでも、年に30回ほど、計100回以上薪窯を体験してきたといいます。
その経験を生かし、窯のどこにどんな釉薬を使った器を置くとどういうものができるか、予想をたてて器を焼きます。

そしてその時、予想通りに焼き上がるのはもちろんですが、
自分の想像を超えていい裏切りをしてくれる器が生まれることがおもしろいと語られます。
そこに魅せられ、窯の調子によって器がとれないことがあるリスクを考えても、
裏切ってくれる器を追い求めるのでしょう。
こうして生まれた器は、私たちにも器のおもしろさを伝えると同時に、
最近の流行りの傾向である
「フォルムが整った、自分の(そして作り手の)手におさまるコントロールされきった美しさ」
という価値観*とは違った、
(*この価値観を否定しているわけでは全くありません。これ一辺倒になってしまうことへ本能的な危惧があります)
人の手を超えたものの美しさという、日本人らしい感性に訴える価値観を伝えてくれていると思います。
それは普遍的な良さへとつながるものかもしれません。
こうした窯の火や自然への畏敬の念や信頼は、
作り手として一歩引き、私たちの気持ちまでも大らかに受け止めてくれる器として
生まれてくるのではないかと改めて思いました。



今回、東京初個展にふさわしい力作が並んでおります。
次に空音で今野安健さんの器をまとまってご覧頂ける個展は、再来年(2年後)の秋の予定で、
その時はまた違った表情の展示になることでしょう。
今回の個展も残りあと2日間。
今野さんの器をご存知の方にも、そうでない方にも、
作り手の手に収まることのない生き生きとした器の数々を手にして頂ければ、
本当にとても嬉しいです。


こちらではたくさんある展示の中のほんの一部しかご紹介できませんが、ぜひご覧くださいませ。




左)灯油窯による粉引。料理を盛るのがたのしくなりそうです。右)一度灯油窯で焼いた白磁薪窯で焼き直した大鉢。色も質感も白磁と思えないような窯変のおもしろさ。






左)アメ釉をかけた器。深いグリーンと力強い形が魅力的。 右)何の装飾もない、何気ない白磁。毎日使いたくなるものはこんな器。リム皿もあります。






左)白磁小皿と小壷。今野さんの花器は野の花を生けたくなる。右)白化粧をした飯碗。すすが静かにかかり火の力を感じながらも控えめな表情に魅かれます。





左)地元山形の土を釉薬にまぜた、焼き締めに近い蓋もの。渋い色合いで、古いもののような質感に仕上がっています。 



展示全体の風景は、当店サイトでもご紹介しております。
http://www.ku-ne.com/page/main/exhibition/1012/exhome.html


またまたですが・・「今野安健 展」イメージムービーもございます。
まだでしたら、ぜひご覧になってみてください。