野の花のようだと思う

たとえばバラの花のように華美ではないけれど、
いつも通る道端に咲く黄色や白の小さな花々には
心魅かれるものがあります。


春の風にひらひらと揺れ、
雨に濡れて少しぐったりしても、
雨上がりには透明のしずくをたくさん葉にのせて、
キラキラとしている。
ふとその存在に気付いた時、
かざらないそのままの愛らしい姿に朗らかな気持ちになります。
田谷直子さんの器は、そんな野の花のようだと思います。


今回、空音で田谷さんの個展は初となりますが、
約6年前のオープン当初からお付き合いくださっている作家さんの1人です。
初めてか2度目に田谷さんの工房に伺った時、
たしかホテルの美術館で開催された「ルーシーリー展」のポスターが貼られていました。
その後も買い付けなどで伺う度、
器にかぎらず、展覧会の本やはがきなどが置いてあり、
いつもにこやかな田谷さんの勉強熱心さに関心させられてきました。


でも田谷さんには力の入りすぎた気負いがなく、
どんな暮らしの中でも毎日気兼ねなく手にしたくなる魅力があります。
それはたぶん「できるだけシンプルな材料で作りたい」と語られているように、
道具としてでしゃばりすぎない器に美しさを見出しているからなのだと思います。
お付き合いを始めた頃から、
使う土や釉薬が変わっても、
器作りへの謙虚で素直な田谷さんの姿勢は何もぶれるところがありません。



待ちに待った空音での初の個展はたのしみなものとなりそうです。
今週末、小さな空間がたくさんの花で飾られ、
きっと皆さまの心休まるような展示になることと思っております。