焼くということ

自然の力は偉大で、人の力や思いはそれに及びません。
音楽でも芝居でも映画でも何でもよいのですが、
すばらしい作品が出来た時に、神が降りたという表現をすることがあります。
アーティストたちの計算、思惑以上の作品となった事を表していると思いますが、
これは人の手の及ばない領域に美しさを見出す私たちには理解しやすい感覚です。




作家ものの器は1点1点異なると言い、まさに自然の、偶然の美しさを追い求める分野の一つです。
偶然というと、ただ自然に身を任せておけばよく、気楽なものに見えるかもしれません。
実際は作り手たちは、絡まり合う様々な要素を想定して、一番良いように作用する状態を準備しています。
そのために持てる経験と感性、技術、集中力を注ぎます。
そして最後に祈るように、土で形作ったものを窯に預けます。
ちっぽけな人が覚悟を決めて力を尽くすことでしか、
人の力を超えた偶然の素晴らしさを生みだせないという事だと思います。
そういう意味で焼き物を職業にしてきた人、している人たちは、
器を愛してきた過去の人々、器を愛する私たちの思いを託された、
代表選手と言えるのではないでしょうか。
日常の道具にすぎませんが、
窯で焼かれ、一つの作品として姿を表した器は、
小さくともやはり特別な存在です。




今日は何を書こうかなと思いながらPCに向かいまして、思ったより長くなってしまいましたね。
最後に、先週入荷した品々をご紹介させてください。




今野安健さんの、粉引5寸皿。2415円。
大胆で潔く、表情はさまざま。
古い物がお好きという方にもお気に召して頂けそうな趣きです。



西本良太さんのコーヒーフィルターホルダーも再入荷しました。2310円。
1〜2人用、3〜4人用のコーヒーペーパーフィルターを20枚前後入れておけます。
必要最低限まで削いで、考え抜かれた道具。
原点にある西本さんらしいシンプルな発想が手に取るように見えてきます。
(今回はねじが見えるタイプです。)




21日〜23日の連休中は、当店は土日の2日間開きます。
お時間ございましたら、ぜひ早稲田へ足をお運びください。


では、お休みの方もお仕事の方も、秋の気配を感じながらお過ごしください。